本当に「技術は差別化にならない」のか?

by tanabe on November 29, 2004

「技術は差別化にならない」?

CNET JapanのInterviewにExcite 山村社長の話が出ていた。
タイトルはずばり「技術は差別化にならない」

「 そもそも、技術はアドバンテージにならないと思っているんですよ。特許があれば話は違うかもしれませんが、技術は絶対に追いつかれる。特にネットの世界では数カ月のアドバンテージにしかなりませんから、技術で差別化を訴えるようなものにはあまり意味がないと思っているんです。それよりも使い勝手やコンテンツの中身で勝負していきます。

 ポータルサイトには何か特別な技術があるわけではありません。24時間365日安定的に大量のデータを配信するという運用能力はありますが、これは技術ではない。「技術が大きな差別化になると思ってはいけない」と技術部の人間には常に言っています。

 一番大切なのはブランドやユーザビリティ、それにオリジナリティです。当社が新しいコンテンツを作るときには、他がやっているものを作るなと言っています。読者がなぜエキサイトに来てくれるかといえば、エキサイト翻訳やエキサイトイズム、ウーマン・エキサイトなどがあるからです。特徴あるコンテンツというものは、人がついてきてくれます。それを作らないといけない。」

「--ネット関連企業では、技術に力を入れるところが多いようです。

 私も技術系の仕事をしていたことがありますが、技術よりも大事なものがあると思うんです。それはサイトのイメージやブランド、ユーザビリティなどです。」

「 我々はブランドイメージのポジショニングをしっかり築いて、そこに合う人がついてくるようなものを作らないといけない。自分たちの味を出さないと、そのサイトに行く理由がないんです。それなら「Yahoo! JAPANに行こう」となってしまう。どこにもないものを一つずつ増やしていけば、エキサイトを訪れる理由ができる。」


”情報産業”ではなく、「生活密着型サービス産業」企業

とにかくInterviewを読んでいて感じたことは、山村氏が「既存のビジネスロジックにきちっと立った視点」の方だ、ということ。
そして、そう考えながら読んでいると思い出したのが、梅田望夫氏の言われていた(Googleと楽天・ライブドアは)「産業として連なる系譜が違う」という話。

「楽天やライブドアは、戦後日本の「お家芸」とも言うべき、人材の厚みや経験の蓄積のある「生活密着型サービス産業の系譜」の上に連ねるべき企業なんじゃないだろうか。」

「AmazonやYahoo!といった先発の米ネット列強は、Googleの登場によって、ネット産業というのはひょっとしたらテクノロジー事業なのかもしれない、という仮説を検証しなくちゃいけないことに気づいた。」

「消費者を主対象とするネット産業というのは、そもそもが「生活密着型サービス産業」と把握するほうが普通で、アメリカの、しかもGoogleだけがそれを「テクノロジー産業」だととらえなおした突然変異なのだ」

やっぱり日本のポータルサイト経営者の方の視点というのは、基本的に「生活密着型サービス産業」の上にあって、「テクノロジー産業」としてのチャレンジを行う企業はいないのか、と。これは別にプラスの意味も、マイナスの意味もなく、「やっぱりな〜」と非常に納得できたのです。山村氏ご自身は非常にチャレンジ精神の旺盛な方なのであろうことは、ご自身の経歴通りですし、我らが(笑)livedoor blogの堀江氏も、楽天・三木谷氏も一般的には攻撃的な姿勢の方だ思っています。その御三方がそろって「テクノロジー産業」へのチャレンジをしていく姿勢が薄いというのは、この辺りの経営の舵の向く先というのはパーソナルな姿勢に左右されるものではない、ということを改めて確認させられました。

もちろん、争う産業というカテゴリーが違うので、どちらが優れているというものでもないのです。
ただ、面白いなぁ、と他人事として楽しんでしまいました。

「テクノロジー産業」Googleの競争優位

さて、ここで終わってもよいのですが、もう少し補足の話を提供しておきます。
上記でいう「テクノロジー産業」としてのGoogleはどれだけの技術的なアドバンテージを持っているのか。
これについても面白い話が梅田氏のBlogにあるので、引用しておきます。
(引用元の作りの性質上、引用した文が実は別の方のBlogの中での意見であり、梅田氏の意見ではない場合があります。ご留意ください。)

「Rich Skrentaの論点は、「Googleだけがもう既に、他社(例、Yahoo!) が追随しようにもコスト的に追随できないだけのプラットフォームを築いてしまったのではないか」というものである。僕も全く同感。Googleの競争優位の真の源泉はここにこそ存在するのだと思う。」

「そして、この分散コンピューティングプラットフォームという、98年創業以来磨きに磨き上げてきた自前のインフラがあるからこそ、GoogleはGmailというサービスを構想することができたのだ。競合企業は対抗したくても、コストが見合わないから、そもそもサービスすら提供することができないのではないか、というのが本稿の論点である。」

「Googleは、インターネットの「あちら側」に全く新しいコンピュータを作り、その性能を日々上げていくことに、飽くなき努力を傾注し続けている「新時代のコンピュータメーカー」なのである。」

(以上、「Googleの本質は新時代のコンピュータメーカ」より)

分散コンピューティングプラットフォームの詳細を知りたい方は、より技術的な話がここの中から辿れる「The Google File System」にあるのでご一読を。

さらに、深い話題としてここまで行きます。

「今、Googleは、MSNやYahooのサーチとの競合を全く心配していない。メディアがそこにフォーカスしているのは、Googleにとって有利。Googleの真のターゲットはWindowsだからなのだ、と。」

「Googleは、バックエンドの「GooOS」と「a massive, general purpose computing platform for web-scale programming」を前提に、いずれ新しいデスクトップ環境をほぼ無償で提供し、我々のコンピューティング環境を一変させてしまうであろう、と。」

「「googleはかなり大きな会社だと思いますが、根っこの部分では日本の中堅製造メーカーに似た感じで、インテグレートされた「マシン群」を製造設備として「核」に据え、その周辺に、大学やその他の研究機関の研究室に直結した才能を集め、実験的なプロジェクトの中から面白いものが生まれてくると、それを「核」に取り込んでいくようなイメージ、でしょうか」」

(以上、「Googleの独自技術はどこまで汎用的で競争力があるのか」より)

こうやって追ってくると、元のExciteの話題とも絡みますが、焦点となってくるのが、この言葉に集約されるのかな、と。

「「Googleの本質は新時代のコンピュータメーカ」を書いて以来、僕が今も引き続き悩んでいるのは、(1) 「さぁこれからカネに糸目をつけずにGoogleを追いかけるぞ」と競争者が決めたときに、このGoogleのブラックボックスは、どのくらい先行しているものなのか? という問題。(2) Googleの新しいコンピュータは確かに凄い代物だが、Rich Skrentaが「a massive, general purpose computing platform for web-scale programming」と言うように本当に「general purpose computing platform」なのであろうか? という問題。つまり、特殊な目的に合致した凄い性能を出すコンピュータというのは、歴史的にみていくつも存在したが、Googleのコンピュータにおける汎用性の度合いがどの程度なのか? という問題。」

そして、もう一つ。こちらも梅田氏のBlogでは盛況な話題ですが、「ネット世代・PC世代」論争。
たとえ 「生活密着型サービス産業」であろうと、インターネットを使って商売をしている以上、今後のユーザーの動向を読む必要があり、この話題はけして無視できない話であるはず。むしろ私は「生活密着型サービス産業」だからこそ、生き残りを左右する一番のキーは「ネット世代」の空気をどれだけ読めるかになってくると考えています。
こちらの話はここでまとめるのは、あまりに苦しいので後日あらためて書こうと思います。興味のある方は、ここの話からどんどん深みにはまっていって下さい。面白いですよ。

話が硬かったので、最後に息抜きに。いや、たしかに笑えました


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ZDNetのこの記事を読むと , エキサイト山村社長わ 技術も差別化要因になると言っている様です . 但し , 数か月で追い付かれる様なものであれば差別化にならない , と . そして , なかなか追い付かれない様な技術を手に入れるのわ困難 , ビジネスとしてわ企画で差別化を計らざ
技術わ差別化にならないか【Seisei_Yamaguchi weblog】at May 05, 2005 17:39