下北沢とアーキテクチャ

by tanabe on November 19, 2004

下北沢の持つソフトウェアのポテンシャルは計り知れない。
特に音楽好きにとっては「外せないマチ」であるはずだ。

スタジオ、ライブハウス、CDショップがそこかしこに
隠れており、東京で尖がった音を求めるのであれば
下北沢へ、というのは疑う余地がない。

アーティストにも下北沢を愛している人は多い。
メジャーとなり、ホールクラスを埋めるようになっても
ふとした折に下北沢のライブハウスでライブをしていたりする。

さらにファッション、文芸、食、芸術、映画、演劇。
下北沢はメインストリームからちょっと外れた
独特の空気を醸し出し、日本のソフトウェア界を引っ張ってきたのだ。


その下北沢が今、大きな危機を抱えている。
ひょっとすると5年後には私たちの愛した下北沢がなくなっているかも
しれないのだ。


  「そんな駅北口の商店街を道路が分断し、南口の住宅街を貫く予定だ。
   道路の拡幅ではないため、商店や住宅をつぶさなくてはならない。
   最大幅二十六メートルと環七並みの幹線道路で、
   「路地が破壊される」と住民やシモキタファンが猛反発する。」


  「なぜ急に建設へ動き出したのか。
   区は「小田急線の地下化が決まったのが大きなきっかけ」
   と説明する。」


記事を読んで頂ければ分かるのだが、この再開発が必要となる理屈は
こんなかんじである。

   『小田急線の地下化』の実施
  →『鉄道と幹線道路が二カ所以上で交差』することが条件
  →『幹線道路となる54号が必要』

この計画はハード面でのアーキテクチャ主導で開発が決定している。
しかし、下北沢は稀にみる豊かなソフトウェアを持つ町である。
大規模再開発は間違いなく現在の下北沢の空気を殺すだろう。


IT業界は、ハードとソフトのアンバランスが致命的な
欠陥システムを生み出すところを何度も見てきている。
ソフトウェアアーキテクチャとハードウェアアーキテクチャは
どちらか一方だけを考慮するだけではベストの解を得られない。
双方を互いに補完的に働かせることで初めてシステムとして機能する。

下北沢大規模再開発のやっている愚が分かるだろうか?
立派なハードを整えて開発をしたところで、
そこにできるのは本来の活気を失い死んだ町だ。
下北沢の一番の財産であるソフトウェアを犠牲にして作られた町は、
ただの「渋谷と新宿に近い町の一つ」と成るだろう。


優れたアーキテクチャの構築とは、
先で起こりうる変化を予測し、その変化を吸収し、
良い方向へと走り出せるようなプラットフォームを築くことである。

目先のお金に目が眩んだままでは、
長期的な利を逃すことになる。