あと、これは蛇足だけどブルーオーシャン戦略の紹介についてはウソに近いので信じないように。まぁ、あのエントリだけじゃなく Web で情報を読むとたいていポイントがずれてます。「戦略」と付いているのをなぜか無視しようとするものが多すぎます。
本を読めば一発でわかることですが、「ブルーオーシャンを行け!」なんて言葉に価値はないんです。そんなの最初から誰でもわかっている。そこに顧客にとっての新しい価値軸を生み出すためのツールとフレームワークを紹介している(そしてそこに戦略的に思考するための仕組みが入っている)のがすごいんです。(チャン・キムのチームはそのための体系だった分析と立案のプロセスも持っているはず。だからあの本は元からできる人はあの本でもやれるけど、できない人は読んでもできずにコンサルを依頼するというそういう本です。)
ブルーオーシャン戦略だって、けっきょくは魅力的で説得力をもった戦略キャンバスを描くことにほとんどの価値があるわけで、じゃ、その戦略キャンバスを描くための分析はどうするの?顧客を魅了する価値曲線はどういう風に見つけるの?と考えて、そこをある程度ロジカルに系統だててやろうとするとけっきょく必要になるのは kaz_ataka さんが言っていることがすべてなんじゃないの?ってことです。
Web でブルーオーシャン戦略の話を見ると、「ブルーオーシャンがあります。レッドオーシャンというものがあります。ブルーオーシャンを行きましょう。」というのをあたかもブルーオーシャン戦略かのように言っているものが多く、皆本当にチャン・キムの本を読んだのか不思議になります。
本としての「ブルーオーシャン戦略」は実はけっこうチャン・キムのそれまでの主張の総まとめみたいなものになっていて、Ajax のように良い名前をつけた瞬間爆発的に有名になった観があります。なんせ1999年にすでに「バリュー・ブレークスルー」「バリュー・イノベーション」と呼んで新市場を創造せよと言い「バリュー・ブレークスルー・マーケティング」という論文を HBR に発表していたわけです。書籍「ブルーオーシャン戦略」に出てくる「戦略キャンバス」も「ティッピング・ポイント・リーダーシップ」も自身の過去の論文を元にした内容です。
個人的には HBR で読んだ「ティッピング・ポイント・リーダーシップ」が忘れられません。ソフトウェア開発をよくするために組織を変えようとやってきた発想のベースはほとんどこれだったりします。達人プログラマーや XP を読んだのはこれよりも後、実際に組織を変えようとしていく中ででした。
ということで(?)、チャン・キムのすばらしい書籍を読みましょう。という話でした。
ランダムハウス講談社
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