岡本吏郎さんの「会社の数字がカラダでわかる!」

by tanabe on July 28, 2006

岡本吏郎さんの「会社の数字がカラダでわかる! 〜会計するカラダのススメ〜」を読みました。

基本的には会計の本なのですが、それ以上に会計の話を通して、マネジメントということについての思想を伝えようとする。そんな本です。

管理するのでも、コントロールするというのとも少し違います。何もかもを自分が手を出すことはできない中で、正しい方向へ行っているのか否かというのを、どのように判断するのか。そのための知恵が詰まっています。

これはまさに知恵の本です。とにかく実際に必要なことは何か。会計ということが現実的に役に立つためには、一体何をする必要があって、何はする必要がないのか、それはなぜか。そんな「知恵」が書かれています。

一方で、会計についての「知識」はとても手薄です。必要ないから薄いのでしょう。試験に答えるための会計を知りたいからとか、知らないと恥ずかしいから、というような動機でこの本を読むのはオススメしません。(いや、ある意味、そういう人こそ本書を読んで考えた方がいいんですけどね。)

まー、それにしても、この岡本吏郎さんの書く内容を読むと、なぜかいつも羽生章洋さんの文が頭に浮かんで仕方ない。地に足の着いた主張。あくまで基礎を徹底した結果の他とは一味違う知見。どうにも受ける印象というか、色合いが似ているのです。

たとえば「DB の仕組みを正しく理解して適切な SQL を書かないから、パフォーマンスも出ないんだよ!」みたいな話と、「経理はまずは徹底した実査なんだよ。会社にとっての入出金の現実の姿が見えずに会計がわからんとか言ってちゃダメなんだよ!」みたいなのは、ジャンルが違うだけで姿勢は同じ。しかも会計をカラダで理解しろ!って。いつ「量は質に〜」て出てくるかとひやひやしながら読みました。

じゃ、最後に一節を引用。

粗利額と人件費の二つの管理。これが経営の基本だ。とどのつまり、経営の管理はこれだけ。これ以上でも、これ以下でもない。
経営とは、この二つの数字とそのバランスを見ていればよい。当然だが、粗利額は1円でも多く稼ぎ、人件費は抑える。
ただし、人件費の管理は絶対額ではない。割合で管理する。図の限界利益を分母として、人件費を分子とした割合で見る。これを労働分配率という。
この労働分配率を低くする。妥協せずに低くする。そういう経営ならば儲かる。これだけだ。これは決して人件費の絶対額を低くすることではない。給料は同業他社よりも支給する。しかし、労働分配率は低いというのが理想。そのためには分母の限界利益を多くすればよい。つまり、一人当たりの限界利益を多くすればよいことになる。

そして、そうこう思いながら、Bloglines でフィードを読んでたら、こんな話が。
夏のはぶにっき コストのはなし
うーん、おもしろい。