そのWeb2.0はあなたにどんな価値を提供しますか?

by tanabe on April 13, 2006

なんだか今日はWeb2.0な記事をいくつか見たので、ひさしぶりにこういう話題にコメント。(ここで言う「いくつか」は「一つ二ついくつか」というレベルなので注意。)

火元はR30さんとそこで紹介されているasahi.comの記事だろうか?

どうもWeb2.0と経済活動の話が入り組んで、どこへ抜け出したいのかよくわからないのだが、とりあえず、「Web2.0的なもの」の話をするなら、そこで取り上げるものがどんな価値を生み出すのかを提示しないと、「うん、そうだね。2.0ぽいよね」みたいな話で終わってしまうと思う。

たとえば、del.icio.usであれば広くなり過ぎたWebに対して、その箱庭を自分で作れることに価値があったのだと思う。ただ、その箱庭にはAPIが付いていて、外の世界(別の人の箱庭)につながっていたりして、今までは見ることができなかった"他人の眼で見たWeb"を見ることができたりした。(複数の他人の眼によるWebも含めて)

「こりゃ、おもしろい。しかも便利!すばらしいよね。しかも、技術面でもおもしろい点がいくつかあるんだよ。」というのが一つの視点。

もう一つの視点が、Googleの広告すら載せないdel.icio.usがどうやってやりくりしているのか、という視点。

これも日々少しづつ変化しているし、シリコンバレーの文化に負う部分が大きいので、現時点で言えることがすべてではないのだけれど、Web2.0と言われるようになった最近の変化として感じることがある。

それは、情報サービス(なんだこの単語)というものの将来価値がこれまで以上に非常に大きく評価される状態になったということ。大前研一氏が新資本論で主張し、見えない大陸の特徴として挙げていた「マルチプル経済」がさらに極端になっている。

前述のdel.icio.usがYahoo!に買収されたのもその一例だ。別にIPOを目指さなくてもサービスとそれを生み出す人材が魅力を感じさせれば、ひょっとしたらPC数台に数人しかいない企業が破格の金で売れるかもしれない。

サービスも含めて「売りモノ」として認識できるようなものがなくても、個人にとっては十分に巨額といえる金を生み出せる可能性が拓けている。(この状態が良い姿かは別の問題。ただ、事実としてdel.icio.usもFlickrもIPOを必要とせず売り渡すに十分な額の提示を受けたということに注目する必要はあると思う。)

マルチプルの種になる程度の株価すら必要がなくなっている事実は、可能性と感じるか、それとも虚業と受け取るかは人様々だろうけど、ぼくは買収している人々は誰よりも敏感なパラノイアだからこそ、今その時点で買収をしかけているのだと解釈している。IPOをする頃にようやく価値を測る。それじゃToo Late.だという判断なんだろう。

ここに真性のパラノイアではなくて、単なるお金に敏感な人が大勢絡んでくると、たしかにバブル化しやすいのだろうけど、その本質の部分で今の傾向が単なる踊らされている状況だとは思えない。経済活動としても今後の一つの方向性を示していると思う。(必ずしも目新しくはないけど。ステップが一つ進んだというイメージ。)

ここまでだと、Web2.0のスペシャルな部分というのはあまりない。

どうしてここまで騒がれるかというのは、この二つをぼやかしつつ密につないだところに理由があるような気がする。

Webのスケールっていうのはとてつもなくパワフルで、それに使われるのではなくて、そのパワーを使役するためにはどうすればいいの?という疑問に対して、そのためのいろいろな視点というのがWeb2.0というキーワードで提供された。

で、一方でマルチプルに将来価値を評価されるような企業は例外なくWebのスケールを意識してサービスを提供できる企業だという傾向があった。(その最高峰が会社の戦略自体にWebのスケールに対する目的意識を組込みまくったGoogle?)

それぞれは別々の現象を描いているんだけど、そこを短絡的に結んで「じゃ、Web2.0儲かるじゃん!」みたいな変な走り方をしてしまった(あるいは意図的にさせた)のかな、と思う。そこを目的にしちゃうと何もないのにね。

うだうだ書いたけど、まとめにしては陳腐なのでそろそろ止め。