とても今さらですが、「プロとして恥ずかしくない」 シリーズがえらく売れているようですね。
GoodPic.Comさんでもこの本の良さを書かれていたりしています。
フォトショップ 写真補正&加工の大原則
http://www.goodpic.com/mt/archives2/2006/02/post_144.html
フォトショップ : カラーバランスで色かぶり補正
http://www.goodpic.com/mt/archives2/2006/02/post_145.html
で、誰か指摘済みだろうと検索したもののGoogle先生によると目立って指摘している人がいないようなので、エントリしておいてみます。
「プロとして恥ずかしくない」シリーズは売れるべくして売れていると思っています。その理由がこの二つ。
- ライトユーザーターゲティング
- 強力なダブルバインドによるタイトル
ライトユーザーターゲティング
ライトユーザーターゲティングは理解されている方が多いと思います。「プロとして恥ずかしくない」と言いながらムックで出しているところからもわかりますが、このシリーズのターゲットはその道でお金を稼ぐプロの人ではなくて、プロのようになりたいアマチュアです。
ブログが広まったこともあり、自分のためにデザインをしたいけれど、もう一つ思ったとおりにうまく行かない、という人は多いのではないでしょうか。
そういう人にターゲットを絞って、欲しい情報をWeb(というかはてブ)でも人気の「まとめ」形式で提供するというのはとても合理的です。
それが技評とかではなくて、MdNが出しているというのもポイントが高いでしょう。
ダブルバインド
でもこの程度のことはどこの出版社も考えてます。その証拠にコレ系の雑誌や書籍は毎月のように出版され、淘汰されています。
では、なぜこの「プロとして恥ずかしくない」シリーズはこれだけ実績を残しているのでしょうか?
その答えが、もう一つのポイントであるダブルバインドにあります。
ここで、ダブルバインドの効果を生んでいるのは、「プロとして恥ずかしくない」というタイトルです。
「プロとして恥ずかしくない」という記述には、ある前提が隠されています。それは、この本は「プロ向けのものだよ」という情報です。
なんせ「プロとして恥ずかしくない」ことを説明する本なのですから、アマチュア向けなはずがありません。
そして、この前提となる情報は表立って主張されているわけではないので、するりと真実として意識の中に入ってきます。
1+1=!?
そして、ここで生きてくるのが先ほどのライトユーザーターゲティングです。
ライトユーザーはプロに憧れています。ここでいう「プロ」はお金を取れることや、プロフェッショナルとは?とかいうときの「プロ」ではなくて、未熟な自分と比較してホンモノの人々のことです。そのホンモノな人のイメージをプロという言葉に託してます。
だから、ライトユーザーが欲しい本というのは、自分もプロのようになれる本なのです。
ライトユーザーには「プロのようになれる本」が欲しいというニーズがあります。「プロとして恥ずかしくない」というタイトルは、「この本はプロ向けだよ」というメッセージがあります。そのメッセージはダブルバインドのテクニックで上手に隠されています。
『「プロ向けの本」であれば、自分もプロのようになれる本格的な内容が書かれているに違いない!』こう思うのは不自然なことでしょうか?そして、この結論は人から押し付けられたのではなく、自分の中で出したものなのです。
これがこのシリーズが売れている理由の一番強力なものだと思います。
実はシリーズを何冊か購入してしまっているのですが、たしかにまとめとしての丁寧さにMdNの意気込みは感じますが、内容的にこれまでのMdNのムックと比べて決定的に違うというほどではないように感じます。(従来も私のようなシロウトには十分にありがたいレベルの内容だったという意味です)
「ターゲットを絞って、これはあなたのニーズにあった品物だよというメッセージを届ける」というやり方はとてもシンプルですが、本質的で強力だなと感心しました。
最後に今回は説明を省いているので、ダブルバインドの強力さを知りたい方は石井裕之さんの「コミュニケーションの催眠誘導」をオススメします。類著や同著者の他書籍よりもずっと本質的な部分を解説してあります。
光文社 (2000/04)
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昨年ですが、idea * ideaでもダブルバインドが強力だと紹介されていました。こちらは石井さんの別著作ですね。人の誤解を生まないタイトルなのでこちらの方が買いやすいかも。