おおいゆうすけさんの「とりとめもなく日記的雑記」の「馬場さんご本人?へのご回答」へトラックバック。
日経コンピュータの馬場史郎氏の連載への意見を書いたら、Babaさんという方から返事が来ていましたよ。という話だ。
どうも単に問題意識のずれが根っこにあるだけで、どちらも求めているものはあまり違わないような気もする。
馬場氏&Baba氏は「社会人なんだからビジネスのルールくらいは知っとけよ。」という意見だし、おおいゆうすけさんは「エンジニアなのになんでこんなことも知らないんだよ!?(最低限必要な技術は身に付けようよ)」という意見のようだ。
つまり、ビジネスルールをわきまえないエンジニアへの意見と、技術力不足のエンジニアへの意見がごっちゃになっている。おそらくどちらも想定される過去の誰かへの思いがイメージにあるのだろう。
現実にはどちらのパターンの人もたしかに居て、一緒に働く身としては、どちらのパターンもそれぞれぜひとも改善してほしいので、この話自体への感想は、「うんうん、どっちもその通り!」といったところ。
実はようやくここからが本題なのだが、テーマとずれた箇所が面白かった。
http://www.yusukeoi.net/archives/2005/08/post_115.html
僕の(馬場氏より格段に少ないですが)経験から言えば、技術的にベストでないソリューションを、人間力でなんとかしようとするSEが多すぎると思います。
技術的な質が高いとはいえないデザインでシステムを作り、プロジェクトがトラブルになるとします。そして、そこで活躍する火消しSEがいますよね?そういう人って、トラブルプロジェクトを救ったスーパーSEとして、賞賛されますよね?特に日経コンピュータなんかは、そういう風潮が強いように思います。確かにその火消しSEさんもすごい人なんでしょうが、本来必要なのは、高度な知識と専門性を持って、その技術力でトラブルが起こらないようにデザインや実装を行うSEさんではないでしょうか。
これもおっしゃるとおり。そして、言い尽くされてきたように上流での良い仕事が下流での問題を防ぐわけで、火消しをしないでいいプロジェクトであるに越したことはない。
「越したことはない」わけなんだが、実はこの火消しスタイルの根底には低価格化が進むこの業界の構造的な問題があるような気がしている。
それは、こんなデスマスパイラル。
- 営業的に勝つために、安く請け負う。
- 請け負ったはいいが、当然赤字は避ける必要がある。
- まずはそこそこ黒字になるように、安い人材から投入。
- 安い人材=経験不足の若手 or 実力のないベテラン
- 当たり前のように炎上
- 仕方なく火消し(最初よりはいいベテラン、優秀な若手の投入、人員増、コストも跳ね上がり)
- 赤字
なんだかそりゃ失敗プロジェクトも量産されるよなーと思う。
だいたい、「技術的にベストでないソリューションを、人間力でなんとかしようとするSEが多すぎると思います。」どころか、「技術的にベスト」かどうか検討しようともせず、問題意識すらない人だっている。それはきっとベターなものがあるという経験がないから、ずっと「最初に思いついたデザイン=答え」で行ってしまうのだと思う。
それじゃ、どうやったらそのベターなものを検討する機会が得られるかというと、自分のよりも優れたデザインと出会うしかない。そのためには、自分よりも力のある技術者と仕事をするか、あるいは文字情報としてでも優れたデザインを吸収できるよう本やWebを漁りまくるしかない。
そうすると、やっぱり安いフィーでほいほいと働かせられる人材ではなくなってくるのではないかと。
こう技術者もその製造物もコモディティ化してくると、(人月スタイル自体の問題は置いておくとしても)人月単価で見積りをして、その金額はすべて発注元がかぶるというスタイルは破綻しつつあるような気がする。そのスタイルで「いい製品」を提供するにはかなり厳しいラインにまで単価が下がってきているのかな、と。
「だから、ASPだ。salesforce.com万歳!」というような短絡的な解決策は挙げないけれど、システム開発で食い扶持を稼ごうという人は、「どこで利益をあげられるのか」をそろそろ真剣に考えなければいけないのだろうと思う。
どのようにすれば、シンプルで効果的なデザインの製品をコンスタントに作り上げることができ、かつ自社もばっちり儲けられるのか?
このまま顧客の信頼をなくすようなスタイルでシステム開発をしていくような企業は、上記の問いにかっこいい解答をあみ出した企業に追い落とされますよ、きっと。