音楽ファンによる音楽ファンのための音楽販売を考える

by tanabe on August 01, 2005

世間のITと音楽の関係は将来の楽曲配布の方式とその収益モデルのような話で盛り上がっている。

この点についてはあまり確定的な案を出せないし面白い意見も今のところ出せないので、一音楽好き&IT好きとしての別視点の話を書こうと思う。

テーマは、インターネットと相性のいい”音楽の売り方”だ。(あくまでもこれは音楽好きのための未来予想図だ)

  • カタログ方式とおつかい方式
  • Music Tree
  • Music Treeとカタログ方式
  • WikiとMusic Tree

 

カタログ方式とおつかい方式

インターネットでの販売業を利用の仕方から分類すると、大きく分けて二種類の利用の仕方がある。それがカタログ方式とおつかい方式だ。

カタログ方式は通販カタログのようなものだ。商品を魅力的に展示し、利用者はあれこれ気になるものを眺めながらほしいものをショッピングカートへと放り込んでいく。ウィンドウショッピング方式と言ってもいい。ポイントは何を見せるか(いかに利用者にとって魅力的なものを見せられるか)とどのように見せるかだ。

もう一方のおつかい方式は、もっとわかりやすい。これは検索方式だ。利用者はすでに欲しい商品を決めてサイトに来ている。その商品を買ったら用事は終了、だ。

現在のインターネット販売業を見ていると、たいていこの両者に対応できるハイブリッド方式となっている。トップにはずらずらとお勧め商品やお買得商品が並び、その一角には検索用のスペースがこじんまりと構えられている。

 

Music Tree

音楽ファンに最適な販売方式の話へと進む前に一つ音楽ファンの傾向を紹介しよう。

音楽を好きで、家に地震のたびにひやひやするような量のCDを積んでしまっているような人はどうやって音楽の趣味の幅を広げていくのだろうか?

この答えは、Music Treeにある。

Music Treeは音楽ファンならなんとなく言いたいもののことが分かると思うのだけど、言い換えるとすれば、「ルーツミュージックを探る」だとか「TOWER RECORDS発行のbounceのpeople tree」だとかがイメージと重なる。こういった音楽のつながりを全部ひっくるめたものがMusic Treeだ。

まず始まりとなる好きなアーティストがいる。好きなアーティストなので、たくさん聞き込む。とても好きなので、そのアーティストが好きだといっているアーティストや音楽性を形作っているような昔のアーティストを探して聴いてみる。

また、好きなアーティストはたいていあるジャンルに分類されている。グランジだったり、あるいはパンクだったり、ヒップホップだったり、レゲエだったり、ジャズだったり。さらにそこから細分化されてその時代時代でよくわからない音楽性にカテゴライズされている。そうすると、自分が好きなアーティストと同じジャンルに分類されている人たちは好みの音を鳴らしているかもしれないと思ってそれも聴いてみる。

あるいは好きなアーティストが活躍していたのが古い時代の場合、そのアーティストのチルドレンと言われるような影響を受けた人たちが以降の時代で見つけられる。これらも自分の好きな音楽と近い音楽性であることが多いので、探して聴いてみる。

あとは、アーティスト自身がある程度キャリアがあると、そのキャリアの過程でいっしょに音楽をやった人たちがいる。その人づてでたどってもやっぱり好みに近い音が見つかることがある。

おおまかに説明すると、このように連鎖して関係を結ぶ音楽性の近いつながりをMusic Treeと呼ぶ。

もちろん偶然ラジオやレコード屋で聴いた曲がよくて好きになるというようなこともある。ただ、偶然に頼るとなかなか貪欲な音楽ファンの欲求を満たすことはできないので、ある程度音楽好きな人なら誰でもこんな自分の好きな音楽のMusic Treeを持っているものだ。

 

Music Treeとカタログ方式

そして、このMusic Treeとカタログ方式が相性がいい。最新のおもしろい音楽カタログが読め、そこからアーティストの深い情報までリーチできる。そして気になったらいつでもCD(なり曲なり)をワンクリックで購入できる。

今、一番このイメージに近くて個人的に楽しんでいるのは、HMVのミュージックストアだ。

たとえばoasisでアーティスト名をクリックするとこんな気合の入ったアーティスト解説が読める。そして、そこかしこに関連する気になるアーティスト名が散りばめられリンクされている。

惜しいのは、リンク先がすべてCDの販売画面となっている点だ。これでは気になってもよくわからないまま画面を閉じてしまう。リンク先はやっぱりそのアーティストの解説ページへと跳び、同じ画面でCDや曲の発注ができる方がより利用者の気持ちに沿うのではないかと思う。

このMusic Treeプラス最新ニュースやインタビューなんかが中心の文字通りカタログなデータがあれば、音楽ファンの必要とする情報は一通り網羅できてしまうと思う。

 

WikiとMusic Tree

このMusic Treeの情報は必ずしも販売側が提供しなくてもよいと思う。むしろここは音楽好きの血が騒ぐがままに草の根的に情報を育てていくほうが向いているような気がする。現在の仕組みで最適なのはおそらくWikiだろう。

なんとなくぼんやりと見えているだけなのだけど、この辺りの音楽好きがずぶずぶと深みにはまっていく仕組みをWeb上で良好なインターフェースで実現できたとしたら、そりゃもうぼくのようなタワレコで店員のコメント読んで視聴するだけで4〜5時間をあっさりと潰せるような音楽廃人は降参するしかないと思うのである。