豪ドル預金はお得なのか?・その2

by tanabe on February 16, 2005

豪ドル預金はお得なのか?・その1」の続き。

それじゃ、今度は金利の高さが生きるように1年ものの定期預金で考えてみよう。


1年定期預金(豪ドル)の場合は、プラス。

先ほどと同じように当初の預金額を日本円で83万円とすると、豪ドル1万AUD未満の1年定期の預入金利は4.53000%(2005/2/15現在)である。TTB/TTSは同様に82円/83円として計算すると、預入額は10,000AUD。これが1年後には金利が付いて、10,453AUD。TTBを82円とすると、857,146円となり、+27,146円という好結果が予想される。

なるほど。では、「豪ドル預金は1年定期で組みましょう」という結論となるのか?

為替のリスク。耐えられるのはどこまで?

もちろんそうではない。ご存知の通り、外貨預金は為替のリスクを抱えている。円高や円安へと1年後の為替相場が振れることで、この+27,146円という予想結果は大きく変わってくるのだ。

では、1年後のTTBはいくら程度までが許容範囲となるのか、を考えてみる。

今回の場合、1年後に豪ドルから円へ戻す時点のTTBが80円の場合に、10,453AUD = 836,240円となり、+6,240円という結果になることが分かる。TTBが79円になると、今度は825,787円で-4,213円と損する結果になる。

どうやらTTB80円辺りがボーダーとなるようだ。ちなみにSONY BANKで円の1年定期預金をしていた場合は、0.123%の金利が付いて結局+1,020円ほどのプラスとなる。やはり1年後のTTBが80円であれば、この豪ドル預金という判断は正解だったと言って良いだろう。

結局、外貨預金は割りにあうのか?

それでは、この1年後のTTB 80円というラインは、安全なラインなのだろうか?

この1年(04/2/15 〜 05/2/15)の豪ドル・円相場の値動きを見てみると、1AUD = 74円台 〜 85円台と非常に広い幅で上下していることが分かる。つまり、天才的な相場勘でもあればともかく、まともに考えればこれから先の1年で80円よりも円高になっているか、円安になっているかなどということはさっぱり分からないという結論しか出せないのだ。

ということは、豪ドル預金が儲かるかどうかは、やってみてのお楽しみ、丁半で博打を打つようなものだと思う。

この博打を回避するために、長期で契約し、高金利を生かして為替リスクを金利差で相殺するという手はある。例えば、5年定期で金利が4.53000%であれば、5年後のTTB 67円くらいが損益分岐のラインとなってくる。このくらいの円高がラインであれば、同じ博打でも大分勝ち味も出てくる気はする。

気はするのだが、そこは銀行の方もよく心得たもので、豪ドル定期は1年ものが最長となっている。5年もの定期という商品はないのだ。

(続く)


この記事へのコメント
数年から10年単位で中長期のポジションを持ってみたいのであれば、むしろ外為保証金取引の方が向いているかも知れません。外貨預金と同じく高金利通貨でロングポジションをとれば、金利が狙えます(ロールオーバーの際、ロングになっている通貨で金利を受けとり、ショートになっている通貨で金利を支払う)。加えて、保証金取引は(きちんとした業者なら)大抵いつでも好きな時に手仕舞うことができます。外貨預金の代わりに使うのならばレバレッジは要りませんから、保証金を積み増してロスカット幅をいっぱいに広げてみるのがよいでしょう。例えば松井証券のNetFxだと、AUDのロスカットプライスは中値から15円まで広げることができます。AUD/JPYの過去1年の値幅は約11円、このままボックスが続けばロスカット幅に収まってしまいます。

しかし、ここまで外貨預金(実態はキャリートレード)が流行ると、日本中が一つのヘッジファンドのようなもんですかねぇ... まずないと思いたいのですが、何かの大事件で一斉に全員ポジション解消なんてことが起きたら、世界はどうなるんでしょ?
Posted by 谷村 正剛 at February 21, 2005 18:11
谷村正剛さん、コメントありがとうございます。

だらだらと3回に分けて書こうとしていた話のポイントをすべて押えた上で、解消の方法まで書かれてしまいました。私がこれらのエントリで書きたかった内容はまさに「加えて、保証金取引は(きちんとした業者なら)大抵いつでも好きな時に手仕舞うことができます。」(=外貨預金は流動性のリスクを負う)と「外貨預金(実態はキャリートレード)」です。

その上で、あえてレバレッジを効かさずに外貨預金と(本質的に)同種の商品を作り出し、外貨預金の弱点も回避する提案を頂いてしまうと、3回目のエントリは不要と言っても過言ではないです。(一応、書くつもりですが。)
Posted by zep716 at February 21, 2005 19:38