半可通

by tanabe on January 17, 2005

太宰治の「十五年間」(新潮文庫 「グッド・バイ」)より。自戒を込めて。

 世に、半可通ほどおそろしいものは無い。こいつらは、十年前に覚えた定義を、そのまま暗記しているだけだ。そうして新しい現実をその一つ覚えの定義に押し込めようと試みる。無理だよ、婆さん。所詮、合いませぬて。
 自分を駄目だと思い得る人は、それだけでも既に尊敬するに足る人物である。半可通は永遠に、酒々然たるものである。天才の誠実を誤り伝えるのは、この人たちである。そうしてかえって、俗物の偽善に支持を与えるのはこの人たちである。日本には、半可通ばかりうようよいて、国土を埋めたといっても過言ではあるまい。
 もっと気弱くなれ!偉いのはお前じゃないんだ!学問なんて、そんなものは捨てちまえ!

気弱くなれ、とは自分の前提・知識を疑えということ。疑って、あらためて事実の確認をするということ。

企業人といえば、その道のプロフェッショナルの集団であるはずだが、意外とこれが半可通が多い。なまじ経験があるだけに、その経験に引きずられ正確な現状が測れない人が多い。事実に基づき、正確な現在地を知ることは、問題解決の大切な一歩になる。

グッド・バイ