Firefox は本当に普及するのか?

by tanabe on December 23, 2004

まずは、伊藤氏のNDO::Weblogからの話題。

Firefoxについて、「今後のウェブアプリケーション開発においては Firefox での利用に問題がないことを重視すべきである」という指摘があります。利用者の傾向を見るとGeekが中心であるから、「マーケットにおける初期段階で Geek に受け入れられるかどうかが勝敗の鍵を握っているようなサービス」はFirefoxでの動作が必須条件となってくるというのは、そのようなサービスの最前線で働いている伊藤氏らしい指摘で、まさにその通りでしょう。
非常に含蓄のある内容なので、そのようなサービスの世界の方はぜひご一読を。


一般のインターネットユーザーにFirefoxは普及するのか?

では、一方でGeekではない一般の利用者へのFirefoxの普及というのはどこまで進むのでしょうか?

これを予想するためには、そもそもFirefoxがInternet Explorerに対して持っているアドバンテージは何か、というのを検証する必要があるでしょう。Firefoxのオフィシャルサイトを見ると、その特長が羅列してあります。もちろんIEを意識した記述になっているので、この項目はそのままIEに対するFirefoxのアドバンテージを表していると言って良いでしょう。Firefoxのレビューも調べてみましたが、概ねこの項目と一致する内容が利点として挙げられていました。

FirefoxはInternet Explorerに対する本質的な優位性はない

では、これらのアドバンテージから分かる、IEに対するFirefoxの優位性はどの程度と評価すべきでしょうか?

アドバンテージを分類すると、機能レベルで実現されるものと、ブラウザエンジン(Gecko)レベルで実現されるものに分けられます。機能レベルで実現されるものは、IE側でも容易に追いつくことができます。現時点でもLunascapeSleipnirといったIEコンポーネント利用型のブラウザでは、Firefox同等の機能がほとんど実現されています。つまり、FirefoxがIEに根本的に差別化を図れるとすれば、ブラウザエンジンのレベルでの差別化を行う必要があるわけです。

では、現状でエンジンレベルで実現されているFirefoxのアドバンテージはいかほどなのでしょうか?

おそらく「プライバシーとセキュリティ」の項だけになると思います。他のサイトでの情報から挙げるとすると、レンダリングのスピードと軽快さも挙げられるかもしれません。他は全て「機能」です。Geckoの特長を見てみても、技術的な優秀性は感じますが、ユーザーが感じられるようなメリットはそれほど挙がっていません。

この前提で考えると、新し物好きのGeek以外の一般のWeb利用者がFirefoxを利用するようになる動機はあまりないと感じています。Firefoxと同じような機能を売りにしていたOperaにしても、高い普及率ではありません。現時点で最大の競争優位の源泉であると思われる「セキュリティ」に関しても、けしてエンジンレベルで圧倒的なセキュリティの強度を誇っているわけではなく、こちらのコラムで言われているように

「言い換えれば、FirefoxがIEの直面しているような脅威にさらされていない理由は、Firefoxが消費者の95%が使っているブラウザではないからだ。(中略)しばらくは効力があるが、誰もが同じ考えを持ったら、安全は保たれない。」

という結果が待っている気がします。

日本国内でのFirefox利用率は一桁台に収まる

以上から、結局の所FirefoxのユーザーとなるのはせいぜいGeek止まりなのではないか、というのが私の結論です。「技術方面で新しいもの好きな人々」という特性を考えて、実際に日本ではどの程度の割合の人がFirefoxユーザーに成り得るかを試算して、この話を終えたいと思います。

Firefoxのユーザー数の参考としたのは、国内のFTTHの利用者数。これが、2004年7月末時点で150万人とのこと。国内のインターネット利用者が7,730万人(平成15年通信利用動向調査)なので、日本での普及率予測はおよそ2%程度に落ち着くのではないかと試算できます。米国では4%を超える利用率を達成したという調査結果も出ていますが、それでも10%オーバー、20%というようなシェアを奪うムーブメントを起こすには、まだまだ力が足りないでしょう。


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