「インターネット時代のエンジニアの価値」はエンジニア論ではない。

by tanabe on November 29, 2004

梅田望夫氏 「英語で読むITトレンド」での伊藤直也氏のゲストブログ二日目。本日のテーマは、『インターネット時代のエンジニアの価値』です。

いわゆるエンジニア論ではない

初見では、この文章をタイトルの通り、「いわゆるエンジニア論」として読んでしまいました。小道具がインターネットやプログラミング、インターネットビジネスだったりしたので、ついつい「ソフトウェア職人気質」とかの「エンジニア、かくあるべし!」という文章かという先入観がありました。

Trackbackの数々も読んでみましたが、やはり他の方もエンジニア論として捉えているようです。

しかし、これ、実はいわゆるエンジニア論ではないと思うのです。伊藤氏の主張だけを追っかけていくと、分かっていただけると思います。


エンジニアの相対的価値は低下したのか?

「プロになるための高速道路が整備されたということは何を意味するでしょうか。それは、エンジニアの相対価値の低下を意味します。これまでその道のプロだとして希少性をもって価値を発揮していた人々は、後続の高速道路乗りたちにあっという間に追いつかれてしまいます。」

インターネットの普及によって、エンジニアの相対価値の低下を意味するとの主張です。これには、TBの中でいくつか反論もありました。特に「そんなにエンジニアの質って良くなってないですよ?」という疑問から生じているものが多いようです。

私はここでの意味はこのように捉えています。
最先端への技術情報へのアクセス経路が比較にならないほど整備された。このことで、「誰々しか知らない」という技術が非常に稀になった。つまり、技術の相対的価値が低下した。そして、技術を知るものである、エンジニアの価値も相対的に低下することになった。

「そんな平均化されたエンジニアとしての価値を今後高めていくにはどうしたらいいのでしょうか。コモディティ化が進む技術分野においての技術の知識は、他者との差別化には役に立ちそうにありません。あるとすれば、知識の多い少ないぐらいでしょう。」

このエンジニアの価値の相対的低下をコモディティ化と言い換えています。つまり、「そんなにエンジニアの質って良くないですよ?」という疑問への答えとして、「あるとすれば、知識の多い少ないぐらいでしょう。」が用意されているわけです。技術力の高いエンジニアと言っても、それは知識と経験が豊富”なだけ”のエンジニア。それは、一定の価値はあるけれど、「コモディティ化が進む技術分野」においては差別化できるほどの要素ではないわけです。(職人魂のあるエンジニアの方ほど納得するには抵抗のある話でしょうが・・・)

もはやエンジニアは”一般職”である

「いずれ、気づいたときにはインターネットがあったという世代がやってきます。おそらく彼らの中から、私たちとはまた違った価値観、感性を持ち且つ今現在の技術に最適化されたギークたちが多く登場するでしょう。そんな状況下において、私が技術分野でパフォーマンスを出し続けるのはあまり賢い選択ではないと思っています。」

ここで、とうとうエンジニアという分野でパフォーマンスを出そうとすることは、もう難しいのではないか、と喝破しております。伊藤氏のようなエンジニアがこのような発言をされていることを考えると、いわゆる「エンジニアのキャリア」とやらを考えている人の視点は根底から覆される指摘ではないでしょうか?

私は、この「インターネット時代のエンジニアの価値」を、こういうストーリーだと理解しています。

かつてエンジニアは、”技術職”であった。
しかし、インターネットで技術情報は漁り放題。
いまや技術はコモディティと化した。

つまり、もはやエンジニアは、名実共に”一般職”となったのだ。
一本の技術を追求する職人ではいられない。
従来どおりにエンジニアのキャリアという視点で歩くことは不可能である。

つまり、”一般職”としてのキャリアプランを考える必要がある。
T字型、そしてπ(パイ)字型へと目指す人間像をシフトさせていく必要がある。

こう考えると、最初に「この話はいわゆるエンジニア論ではない」と述べたのがご理解頂けるでしょうか?

大前研一氏「ドットコム仕事術」からT字型、π字型の人間像の解説を引用しておきます。

「 私はつねづね、《T型人間》を目指せといってきた。これは、幅広い知識や経験を持つ(Tの横棒の部分)ゼネラリストであると同時に、何か1つ専門分野を持っている(Tの縦棒の部分)の人間のことを指す、私の造語だ。さらにいえば、ゼネラリストでありながら、専門分野を2つ持っている《π型人間》が望ましい。」

最後に、この文章を書くにあたり、「インターネット時代のエンジニアの価値」および、トラックバックされていた下記のBlogを参考に致しました。
どうもありがとうございました。

「スキルをのばす+広げる」Ken::BLOG*見聞録)さん

「スキルの個人間格差は本当に縮まっているのか?」福井プログラマー生活向上委員会)さん

「技術では差別化できないIT業界の皮肉 」裏サイキック)さん

 


この記事へのコメント
ども、福井プログラマー生活向上委員会(長い)のchikuraです。(^^)/

「コモディティ化」を「エンジニアは一般職である」で言い換えると、なんか分かりやすくなりました。
いつかはそうなるだろうと思ってましたが、そんな時代が来つつあるのでしょう。

ただ、あの文章を読むと、「どのエンジニアに仕事を依頼しても、さほど違いは生まれなくなっていますよ」とも読めるのです。

それが伊藤さんのエントリの主旨でないことは分かっていますが、どうにもひっかかったので。

いくらなんでもそんなことはないですよ、と、そこだけ書いておきたかったのでした。
Posted by chikura at November 30, 2004 07:21
chikuraさん、わざわざコメントまでありがとうございました〜。

「「何かがしたい」と思ったときにそれを実現する部品としてのライブラリはすぐそこにあります。開発のための方法論はフレームワークが規定してくれます。インターネットの普及が、エンジニアの相対価値を平均化してしまったのです。」

「人月計算による計算の方がより妥当であるという見解も、あながち間違いではないという方向に近づいているのかもしれないと見ることもできます」

(伊藤氏のゲストブログより)

といった文章は、たしかに「どのエンジニアに仕事を依頼しても、さほど違いは生まれなくなっていますよ」というニュアンスを含んでいると感じました。

chikuraさんのBlogの中ではよく「技術を誤用・誤認する開発者」の話が出てきていますが、どんな優れたライブラリやフレームワークも、それを上回る無能な人にかかっては、むしろ恐怖しか呼ばないというのは確実に現場の真実なんですよね。

私個人は、技術はエンジニアとしてのタシナミだと考えているので、それが満足に理解できない人はそもそもエンジニアとしての資格を満たしていないと考えており、その視点のためか、あまり違和感なく伊藤さんの話を読んでしまいました。
少なくとも「エンジニア」と呼ぶべき人たちの技術水準が平均化されつつあるというのは、「ふーん、まぁ、そうかもなぁ」と納得してしまったので。

Posted by zep716 at December 01, 2004 03:54
>そもそもエンジニアとしての資格を満たしていない

 な、なるほどー!!
 きっと伊藤さんも同じ考えなのかも・・。

 技術はエンジニアとしてのタシナミ、なんかいい言葉ですね。

 そろそろ自己紹介で「システムエンジニアのchikuraです」ってのをやめて、「○○のchikuraです。SEやPGを嗜んでおります。」と言えるようにしておこうかな・・?:-)

 遅くなりましたが、TB&RESありがとうございました。
Posted by chikura at December 01, 2004 11:45
エラそうに言っていながら、自分が一番未熟者なのが困り者で…
お恥ずかしいかぎりです。
Posted by zep716 at December 02, 2004 03:16